RETURN-RETURN
社会の宿題を5回忘れた者には、先生から歴史の本を読んで感想を書くという
ありがたくない課題が出されるのだ。
特にこの『ローテン=ブルグの歴史』という国の仕組みと建国時のことを扱った分厚い本と
『わが国の現代を考える』というここ200年くらいの王室の歴史を扱った本が先生のお気に入りで、
しょっちゅう宿題を忘れているデューンは最初の方だけはほとんど暗記してしまった。
デューンは反省の意味をこめて一人で顔をたたいて、痛さにもだえた。
「デューン!お帰り!」
しゃがみこんでいた背中に何かが飛びついて、デューンは体勢を崩して前につんのめってしまった。
「いてて」
何とか元の体勢に戻った首に捕まっているのは、黒い短髪でいかにもわんぱくそうな目をした男の子だった。
「デューン兄ちゃん!!」「お帰りなさーい!」「デューン!早く遊んでー!!」
扉からたくさんの子供たちが出てきて、デューンを囲んだ。いつの間にか家に着いていたのだ。
ここはこの辺りで唯一の戦争孤児院だ。
5年前の戦争で親を失った子供たちが集められ、新しい両親の元に引き取られたり、
独り立ちできるようになったら孤児院を出て行き自活している。
「デューン早くー!」「遊ぼー!!」
「だー!!うっさいわー」
デューンは群がる子供たちをぶっ飛ばした。
はたから見たら虐待かと思う行為だが、子供たちはキャッキャッと笑っている。
ここでは日常茶飯事のことなので、町の人たちも全然驚かない。
「デューン!!早く!ダサイジャーはじまるぜ!!」
「はいはい」
子供たちに手を引かれ、デューンはようやく家の中に入ることができた。