RETURN-RETURN
「ん?誰か来てるのか?」
廊下を通り過ぎるとき、いつも開放されている院長室のドアが閉まっていた。
これはお客が来ているということだ。
「町長のじいちゃんか?」
「ううん。若いお兄ちゃんだったよ」
「彼氏・・・な訳ねーか」
「デューン早く!はじまるゾ」
「わかった、わかった」
「先生。デューンさん、私が首都までお連れしてもいいでしょうか?」
院長室のソファーに腰掛けてソルが窓際に立つ、女に言った。
「・・・答えるまでもない。それが命令ならば」
パイプの煙を細く吐き出すと、窓の外に視線を向けたまま静かに、少し事務的に答える。
「・・・だが、あいつは私のことを本当の母親だと思っている。
本当のことを言うのが恐いんだ」
バンッ
ドアが音を立てて勢いよく開いた。